COPPER WORKS 2017-2025 8yo Official Bottling CELEBRATING 10 YEARS OF BAR GOSSE 67%
香りはバニラと蜂蜜、カスタードクリーム、オレンジに洋梨、カモミール、コリアンダー、少しフェンネル、奥からパンのようなモルティさ。飲むと高度数なのにスムーズな口当たり、エステリーさを伴い華やか、オレンジ味のビタミン剤、パイナップル、フルーティな酸を伴うクリーンな余韻。
【Very Good, Interesting】
目黒のBar Gosseさんが10周年でボトリングされた、アメリカのシアトルにあるカッパーワークス蒸溜所のアメリカンシングルモルトウイスキーでシングルカスクです。
ニューリリースをあまり買わなくなり、最近の情報にはずいぶん疎くなってしまった私は初めて飲む蒸留所です。そもそもアメリカのシングルモルトウイスキーというカテゴリーの経験もほとんどなく、あまり好きでないことの多い10年未満の熟成期間で、香味が想定できません。
販売元であるコマスピさんのサイトでは以下のような紹介がありました。
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長年クラフトビールを作ってきた醸造の専門家によってシアトル中心部のウォーターフロントに2013年に設立されたカッパーワークス蒸溜所は、「ホップを使わない高品質クラフトビールから蒸留したら、スピリッツはどんな味になるだろう?」という問いを出発点に、「最良のビールを造り、それを蒸留して最良のウイスキーを」の哲学のもと、通常の蒸溜所よりも高度な糖化と発酵管理を行い、ステンレス製発酵タンクで超長時間発酵させて作った、ホップが使われないだけの違いでクラフトエールとほぼ同等の高品質で清澄なウォート(麦汁)を伝統的なスコットランドのフォーサイス社のポットスティルで蒸溜するというユニークな少量生産の蒸溜所です。
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忖度なしでテイスティングして欲しいというご依頼と共にサンプルをいただき、このような情報はあえて入れていない状況で、遠慮なくコメントさせていただきました。
まず、第一印象からクリーンで非常にフルーティな印象を受けました。
強いフルーツ感にビタミン剤のようなケミカルなニュアンスが伴うのが非常に特徴的で、70年代半ばのフェッターケアンなど特定の蒸留所や一世を風靡したころのウイスキーエージェンシーなどにも散見されたこの系統のフルーツ感は、長期熟成のスコッチに感じられることが多いイメージでした。このボトルの8年というスペックから考えるとこれはかなり特異的で、かなりのハイプルーフですがテクスチャーに尖ったところがないことも併せて、熟成感において非常に興味深いと感じました。アメリカではどんな環境で熟成しているのでしょうか。とりあえず冷涼な環境ではなさそうです。
また、近年だとローランドやアイリッシュとかに多いですが、突き抜けたフルーティさを持つモルトには、私の苦手な青々とした草っぽさや菜っ葉の漬物のようなニュアンスが伴うものが多く、それがないものを飲んできた世代としてはフルーティさだけで高評価するのが難しい状況でした。また、バーボン系の樽感によるフルーツ感が前面に出ており原酒の個性を覆い隠しているものも人気ですがあまり好みではありません。その点、今回のGosseさんのカッパーワークスは、ハーバルでスパイシーな要素はありますがグラッシーさはフルーツ感を複雑にするのに貢献しています。ファーストフィルのバーボンカスクとのことですがその樽感が原酒のフルーティな個性と嫌味なく融合しており、現状でピークと思えるような仕上がりでした。
ストレートはもちろん、加水やソーダ割でもフルーツが伸びて美味しくいただけそうです。
なお、蒸留所名・熟成年数・度数くらいの情報のみで先入観なくテイスティングしましたが、後でオーナーの油井さんのコメントを拝見すると「白ブドウ」や「ディル」というコメントがあり、改めて飲むとまさにそういうニュアンスがあって、ちょっとやられたなと感じました。笑
Gosseさん、油井さん、10周年おめでとうございます。
いろんな意味で「らしい」記念ボトルですね。この度は、興味深いものをテイスティングさせていただきありがとうございました。